台日里山持続可能な発展研究交流会【里山学研究センター】
2024.03.28
台湾の国立政治大学との研究交流会が,2024 年3 月23 日(土)に国立政治大学達賢図書館羅家倫講堂にて行われました.里山学研究センターからは谷垣岳人センター長(龍谷大学政策学部),村澤真保呂研究員(龍谷大学社会学部),鈴木龍也研究員(龍谷大学法学部),金紅実研究員(龍谷大学政策学部)の4 名が報告を行いました.
まず初めに,戴秀雄副教授(国立政治大学地政学系)と谷垣センター長から開会のあいさつが行われ,第一セッションが開始されました.第一セッションは当センターの村澤研究員と鈴木研究員の報告であり,村澤研究員は「現代思想の観点から里山を位置づける試み:文化的価値の評価をめぐって」というタイトルで,近年の生物多様性の科学政策の変遷(主にIPBESについて)を紹介し,哲学的観点から見た里山学研究について報告が行われた.鈴木研究員は「所有者不明土地等関連立法と入会的里山の危機 ─表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化法を中心に─」というタイトルで,日本の森林管理の歴史の紹介と明治以降に行われた山の共同利用である入会をめぐる問題について報告しました.
第二セッションでは,国立政治大学の李明芝助理教授(地政学系)と戴副教授が報告をされた.李助理教授は,「台湾原住民族の自然資源権利と森林産物採集に関する法制度の問題点について:里山の観点から(日本語訳)」というタイトルで,原住民族がこれまで暮らしてき森が,国有林指定になったことによる弊害などについて報告がされ,戴副教授は,「台湾国土計画と里山を連携する問題点について(日本語訳)」として,台湾の国土秩序の歴史や体系を説明し,里山イニシアティブを用いた地方創生への考えについて報告をされました.
第三セクションでは,谷垣センター長が「日本の生物多様性保全型農業の現在と未来」,金紅実研究員が「日本の農業・農村の多面的機能の発揮と環境保全型農業補助金制度の研究」について報告を行いました.谷垣センター長は,生物多様性保全にとって重要な環境である水田において,生き物と共存できる生物多様性保全型農業の推進や現状について報告し,金研究員はその生物多様性保全型農業を推進するために国や地方が行う補助金や交付金の制度やその問題点について報告をしました.
第四セクションでは,国立政治大学の林郁芳助理教授と菅大偉教授が報告をされました.林助理教授は「里山イニシアティブとその実践:台湾農村発展政策について」として,台湾の農村の変化は国際政治経済の状況によって適応,変化してきたおり,現在は里山イニシアティブ行動戦略を用いて持続可能な台湾の農村を発展させていくとの内容でした.また管教授は「原住民知識及び空間プラン:台湾国土計画法施行からの反省と展望」として,これまでの原住民についての法律や国土計画法と原住民文化との対話を行うことより,研究を進めてこられました.報告では具体的な民族の例を挙げながら今後の原住民族空間プランが考察されました.
最後に総合討論として報告者全員が登壇し,報告者同士や参加者からの質問や感想が挙げられました.時間いっぱいまで有意義な討論が行われました.今後も国立政治大学と龍谷大学里山学研究センターとで協力し合いながら研究を進めていく予定です.