Research Centre for Satoyama Studies (Socio-Ecological Studies)

里山学研究センター

センター概要

センターについて

里山学研究センターは、瀬田キャンパスに隣接する「龍谷の森」とその周辺をフィールドとして、里山保全活動を介した環境教育の実践と地域自然共生モデルの構築を目指して、2004年に「里山オープン・リサーチ・センター」として開設されて以来、その研究対象を地域の里山から琵琶湖を中心とする地域市民社会へと広げ、現在ではグローバルな自然共生型社会の実現に向けた文理融合型の研究機関として活動しています。

そもそも「里山」とは、集落に隣接する田畑とそれを取り巻く近隣の自然環境を意味する言葉です。より一般的な観点からみれば、それは人間が長期にわたって手を入れながら利用してきた「文化としての自然」と言えます。

しかし国内では近代のエネルギー革命(薪から石炭、石油へ)や農業革命(人手から機械へ、落ち葉から化学肥料へ)、また市場経済の拡大や産業構造や生活形態の変化により、長らく自給自足経済を営んできた集落と里山の関係が失われ、山林の過少利用によるさまざまな問題が発生しています。

他方で国外の途上国に目を転じると、グローバル化や市場化の進展により、従来は集落の自給自足経済を支えてきた山林の過剰伐採や過剰利用が、世界的な環境問題の要因となっています。

このような人間と共生してきた自然環境は、人間の手が入らない一次的自然(野生の自然)に対して「二次的自然」と呼ばれ、近年その保全と活用が地球規模の自然環境問題の解決に大きな意義をもっていることが明らかになってきました。そして2010年の生物多様性条約第10 回締約国会議(COP10)で環境省と国連大学が中心となり「里山イニシアティブ(The International Partnership for the Satoyama Initiative)」が発足するなど、持続可能社会の実現のために「里山」が果たす重要性は、いまや国際的に認知されるようになりました。

本センターは、里山と地域社会のローカルな研究とともに、グローバルな自然環境問題と自然共生型社会の実現に向けた研究を進め、持続可能社会の探究を牽引する役割を果たしたいと考えています。

センター長からのメッセージ

 里山学研究センターは、長年にわたり人が自然と共に暮らしてきた里山をモデルに、「龍谷の森」の保全と利活用を中心に、自然共生型の持続可能な社会についての研究を進めてきました。特に、生物多様性の保全は、気候変動対策と共に、現代社会が直面する最も重要な環境問題の一つであり、生物多様性の喪失が私たちの未来に大きな悪影響を及ぼすと言われています。私たちの使命は、この課題に果敢に取り組み、地球上の生物の多様性を守り、豊かな自然の恵みを次世代に引き継ぐことです。

 日本は生物多様性条約の締約国であり、2030年までに国土の30%以上を自然環境エリアとする目標を掲げています。この目標の達成には、国立公園のような自然保護区だけでなく、私たちの身近な自然である里山の保全が重要になります。私たち里山学研究センターの研究員は、これまでに培った研究の長所を活かし、里山である「龍谷の森」の生物多様性の保全と利活用に積極的に取り組みます。さらに、研究、教育、地域との連携を通じて、人間と自然の望ましい新たな関係を探求し、持続可能な社会の実現に貢献します。

森のある大学 龍谷大学 里山学研究センター
センター長 谷垣岳人